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藪内 聖皓*; 鈴土 知明
Journal of Nuclear Materials, 574, p.154161_1 - 154161_6, 2023/02
被引用回数:0 パーセンタイル:0.01(Materials Science, Multidisciplinary)原子炉材料において照射欠陥は機械的特性の劣化を引き起こす。これらの材料では、転位とボイドとの関係が機械的強度に特に重要である。これまで球状のボイドのみが研究されてきたが、本研究では球状ボイドと同時に観測されるファセット型ボイドに注目した。よって本研究では、純鉄の照射硬化におけるファセット型ボイドの効果を明らかにするために、分子動力学法を用いて解析した。具体的には、球状ボイドとファセット型ボイドの障害物強度と相互作用過程の違いや、ファセット型ボイドでも転位との結晶学的な配置関係によって相互作用に違いが出ることを明らかにした。
鈴土 知明; 海老原 健一; 都留 智仁; 森 英喜*
Scientific Reports (Internet), 12, p.19701_1 - 19701_10, 2022/11
被引用回数:5 パーセンタイル:48.81(Multidisciplinary Sciences)体心立方(bcc)遷移金属である-FeやWは、{110}面の表面エネルギーが最も低いにもかかわらず、{100}面に沿ってへき開割れが起きる。この奇妙な現象のメカニズムを解明するため、人工ニューラルネットワークの手法で作成した原子間ポテンシャルを用いて-Feの曲線のへき開き裂先端の大規模原子シミュレーションと直線のき裂先端の応力拡大係数解析を実施した。その結果、以下の新しい知見が得られた。{110}に沿ったへき開面のき裂先端から転位放出が観測され、そのことは{100}面が実際に起こるへき開面であることを示唆した。しかしながら、単純な直線状のき裂先端解析では、同じ結論は得られなかった。よって、機械的な強度を正しく予測するためには、高精度なポテンシャルを用いて、材料固有の複雑さを十分に捉えた原子論的なモデリングが必要であることが示唆された。本研究で採用した方法は、bcc遷移金属・合金のへき開問題に一般的に適用可能である。
鈴土 知明; 海老原 健一; 都留 智仁
AIP Advances (Internet), 10(11), p.115209_1 - 115209_8, 2020/11
被引用回数:9 パーセンタイル:52.47(Nanoscience & Nanotechnology)BCC金属の脆性破壊のメカニズムはまだ明確には理解されているとは言えない。本研究では、鉄のへき開破壊の解析のため一連の3次元分子動力学シミュレーションを行った。特に、湾曲したき裂フロントから始まるモードI変形に焦点を当てた。シミュレーション結果、{100}面でへき開による脆性破壊が観察されたが、他の面では転位の放出によりき裂が鈍化した。この結果は{100}がbcc遷移金属で優先的に観測されるへ開面あるという一般的な実験的観察を再現した。
鈴土 知明; 鬼塚 貴志*; 福元 謙一*
Modelling and Simulation in Materials Science and Engineering, 27(6), p.064001_1 - 064001_15, 2019/08
被引用回数:16 パーセンタイル:65.43(Materials Science, Multidisciplinary)低温でのBCC金属の塑性は、らせん転位の移動に支配される。これらの金属結晶におけるらせん転位芯は非平面構造を有するため、その運動は複雑であり、予測不能である。例えば、密度汎関数理論(DFT)は、{面上のすべりを予測するが、高温における実際のすべり面は予測から乖離してれており、そのメカニズムは何十年もの間の謎だった。本研究ではらせん転位運動を追跡する一連の分子動力学シミュレーションを実施し、実験で得られている滑り面の移行再現することに成功した。我々は、次に、Peierls障壁を超えて転位が移動する現象を精査するアルゴリズムを考案し、すべり面移行のメカニズムを発見した。すなわち、転位芯構造の変化がなくても、転位線の大きなゆらぎによって交差すべりのキンクペアが核形成されることを確認した。
長谷川 雅幸*; 永井 康介*; Tang, Z.*; 湯葢 邦夫*; 鈴木 雅秀
JAERI-Tech 2003-015, 137 Pages, 2003/03
材料試験炉(JMTR)で中性子照射した原子炉圧力容器銅のモデルFe‐Cuについて陽電子消滅実験を行い、照射によって生じたナノボイドや超微小Cu析出物を調べた。その結果、ナノボイドの表面は、Cu原子で覆われていること、このようなナノボイドは、約400の焼鈍でその内部の空孔が解離・消滅するために超微小Cu析出物となることを見いだした。また、照射脆化に重要な役割を果たすと考えられているNi,Mn,PなどをFe‐Cuモデル合金に添加した効果を調べた結果、(1)NiやPは、ナノボイド形成を促進するが、Mnは逆に遅らせること,(2)約400の焼鈍によって生ずる超微小Cu析出物はほぼ純銅でこれら添加元素を含んでいないこと、などを見いだした。さらに単結晶Fe‐Cuの陽電子消滅2次元角相関(2D‐ACAR)測定から、Fe中に埋め込まれた超微小Cu析出物(体心立方結晶構造)のFermi面を求めた。この結果はバンド計算の結果と良く一致した。FeCuモデル合金中のCu集合体の陽電子親和力閉じ込めの理論計算を行い、約1nm以上の埋め込み粒子になると陽電子量子ドット状態が実現することがわかった。
岩瀬 彰宏; 石野 栞*
Journal of Nuclear Materials, 276, p.178 - 185, 2000/01
被引用回数:22 パーセンタイル:78.46(Materials Science, Multidisciplinary)高エネルギー粒子照射したfcc及びbcc金属における損傷生成について、最近得られているデータをもとに、おもに、結晶構造の違いから、その高密度電子励起効果、カスケードダメージ生成過程をレヴューする。
土屋 佳則*; 中村 寛嗣*; 村山 茂幸*; 保志 賢介*; 下条 豊; 森井 幸生; 濱口 由和*
Physica B; Condensed Matter, 237-238, p.446 - 448, 1997/00
被引用回数:11 パーセンタイル:58.49(Physics, Condensed Matter)bcc Cr-Fe-Mn合金は組成、温度により磁性が変化する。CrFeMn合金(x≧3.6)では温度降下とともに反強磁性、強磁性、スピングラス相の順で磁気相転移することが確認されている。この磁気相転移現象を詳細に調べる目的で、CrFeMn合金について室温から10Kの温度範囲でのメスバウア効果測定、中性子散乱実験を行った。メスバウア測定から平均内部磁場を見積った結果、磁気相図で推定されるネール点(約250K)以下の温度で平均内部磁場の上昇が観測された。強磁性、スピングラス相の温度領域では温度低下とともに平均内部磁場は一層成長する。中性子散乱から強磁性秩序の存在を示す(100)磁気散乱ピークはネール点以下の温度で出現し、強磁性、スピングラス相の温度領域でも残留している。これらの実験から、強磁性、反強磁性モーメントを算出し、Cr-Fe-Mn合金の逐次磁気相転移を考察する。
土屋 佳則*; 尾藤 輝夫*; 村山 茂幸*; 近澤 進*; 濱口 由和*
Journal of the Physical Society of Japan, 65(10), p.3289 - 3293, 1996/10
被引用回数:17 パーセンタイル:72.3(Physics, Multidisciplinary)Crに対するFeの添加はCrの反強磁性を弱め、Feが19%を越えると強磁性が出現する。一方Mnは数%の添加でCrのネール点を大きく上昇させる。Crに対して相反する作用をするFe、MnをCrに同時に加えたとき、複雑な磁気的性質を示すことが期待できる。本研究ではbcc Cr-Fe-Mn合金について磁化測定を行い、この合金系の磁気的性質を考察した。磁場中冷却(FC)、無磁場中冷却(ZFC)の磁化の温度依存性から、この合金がスピングラス転移することがわかり、同時にアロットプロットから強磁性転移が確認された。これまで報告されている電気抵抗の結果と総合して、CrFeMn、CrFeMn合金について磁気相図を作成した。この合金は温度降下とともに反強磁性、強磁性、スピングラスの順に磁気相転移する。また、LEE-CPA理論との対応、電子数と磁気モーメントの関係についても言及している。
赤堀 光雄; 小川 徹; 伊藤 昭憲; 森井 幸生
Journal of Physics; Condensed Matter, 7, p.8249 - 8257, 1995/00
被引用回数:46 パーセンタイル:89.25(Physics, Condensed Matter)-UZrの格子安定性と構造を熱分析及び中性子回折により調べた。構造はZrの相に類似した修正C32-AlB構造であることを確認した。相格子定数の温度依存性を室温から880Kの温度領域で決定した。相からbcc固溶体相への相変態における熱効果を測定し、X=0.67~0.81の組成域で5.6~4.4kJ/g-atomの値を得た。さらに、この熱効果の組成依存性から、純Zrの/変態熱が約2.8kJ/g-atomであることを明らかにした。
田次 邑吉; 岩田 忠夫; 横田 光史; 布施 元正*
Physical Review B, 39(10), p.6381 - 6387, 1989/04
被引用回数:13 パーセンタイル:61.66(Materials Science, Multidisciplinary)一連のBCC金属に対して、照射損傷の計算機シミュレーションを行った。ポテンシャルは、JohnsonとWilsonが弾性定数を用いて導出した2体間ポテンシャル関数を用いた。閾いエネルギー付近の一次入射粒子(PKA)を種々の方向から入射し、生じうる点欠陥のすべての形態を分子動力学的手法で探した。その結果、BCC金属は形成される欠陥の形態により2ケのグループ、(Mo、W、Fe)と(V、Nb、Ta)に分類できる事がわかった。第1グループでは、既知の通り、110スプリット型格子間原子と通常の空孔のみが形成されるが、第2グループでは、100クラウディオン形の他に2種の格子間原子と、通常の空孔の他に最近接原子位置が平衡値の22%も縮小したものが形成される。これらの結果は、各欠陥の移動エネルギーや陽電子消滅法による実験データをよく説明しうる。よって、BCC金属における点欠陥の形態は、弾定定数の特性から大よそ推定できる事がわかった。
布施 元正*; 田次 邑吉; 岩田 忠夫
JAERI-M 87-026, 25 Pages, 1987/02
核融合炉材料の照射損傷は固体内原子衝突により生じるが、この現象に関する理論的研究は大型計算機の発達と共に近年急速な進展を見せている。本報告では、分子動力学コ-ドGRAPEによりBCC金属のTa結晶中でのはじき出し過程を解析した結晶をまとめた。1)Ta結晶中で生成する格子間原子は〔100〕クラウディオン型か、〔111〕方向への変位が数原子にわたり連続して生じる型の2種類に大別できる。Fe,Moで見られる〔110〕ダンベル型は生成しない。これは、ポテンシャル形状により説明できる。2)Ta結晶中でのはじき出しエネルギ-のしきい値分布は実験結果と比較的良い対応を示す。これから、採用したJohnson型のポテンシャルは現実の原子間相互作用を表わすのに適していると言える。
奥田 重雄
日本原子力学会誌, 17(5), p.223 - 232, 1975/05
体心立方金属の照射欠陥の研究について、最近の進捗の状況の概観を説明した。特に照射欠陥の生成速度、飽和現象、回復過程および照射欠陥と直接関連した機械性質の変化に重点をおいた。
奥 達雄; 薄井 洸
Journal of Nuclear Materials, 40(1), p.93 - 103, 1971/00
被引用回数:8抄録なし
鈴土 知明; 山口 正剛
no journal, ,
体心立法晶(BCC)遷移金属およびそれらの合金は将来の核融合炉の構造材料の候補となっているが、それらの脆性が問題となっている。例えば、照射によって生成されるヘリウム(He)が粒界を弱くし脆化を促進する。本研究において我々は様々なBCC遷移金属に対してHeの粒界偏析の元素依存性を調べた。その結果、元素ごとのHeの粒界偏析エネルギーがばらつきがあり、He偏析にかなりの元素依存性があることがわかった。よって、それぞれの金属のHe脆化の度合は主にそれらのHe偏析エネルギーによって支配されていることがわかった。
藪内 聖皓*; 木村 晃彦*; 鈴土 知明
no journal, ,
高エネルギー粒子線照射によって材料中には様々な欠陥が形成され、機械特性に大きな変化をもたらす。空孔の集合体であるボイドも照射欠陥の一つであり、転位の運動の障害となり硬化を引き起こす。発表者はこれまでに、イオン照射によってファセットボイドを形成させた純鉄を用いてファセットボイドの強度因子について実験的に考察してきた。得られた強度因子にはある程度の幅があることから、転位とファセットボイドの位置関係によって異なる強度因子を与えていると想定される。本研究では、転位とファセットボイドの位置関係や相互作用するファセット面の違いがどの程度強度因子に影響を及ぼすかについて分子動力学法(MD)を用いて検討することを目的としている。
鬼塚 貴志*; 大久保 学*; 福元 謙一*; 鈴土 知明
no journal, ,
原子力プラントではBCC金属が構造材として多く採用されている。これらの炉内構造物の中性子照射脆化の要因のひとつとして、照射欠陥集合体が転位運動に対して障害物として寄与することが挙げられる。そこで分子動力学法(MD法)等の計算科学手法を用いた転位とボイドの動的な相互作用に関する研究が多数行われているが、らせん転位とボイドの相互作用に関しては未解明な部分が多く残されている。本研究では、分子動力学法によりFe中のらせん転位とボイドの動的相互作用メカニズムの解析を行なった。
鈴土 知明; 鬼塚 貴志*; 福元 謙一*
no journal, ,
照射によって転位ループ, ボイド, 溶質クラスタ等の様々な欠陥が形成される。それらは転位の障害物となることから、転位と障害物の相互作用の研究が実験, 理論の両面から進められてきた。しかしながらBCC鉄の理論面に関して、すべり面が低温で{110}であるにもかかわらず、温度が室温程度に上昇すると{112}に変化するという現象を分子動力学で再現できないという問題があった。そのため、我々は原子間ポテンシャルを考察し上記のすべり面の温度転移を分子動力学で再現することを試みた。また、その温度転移がどのようなメカニズムでおきるかをらせん転位のパイエルスポテンシャルから考察した。その結果、適切な原子間ポテンシャルを選択することによって、すべり面の温度転移を再現できることが分かった。また、温度転移は、格子の温度揺らぎによって生じている可能性が高いことが分かった。
鈴土 知明; 海老原 健一; 都留 智仁
no journal, ,
BCC金属は構造材料として様々な用途に使われているが、それらは低温領域では脆性的になり、水素等の不純物によって脆性が促進されることが知られている。脆性破壊は巨視的な現象である一方、き裂の進展は原子間結合の切断によって生じる微視的な現象でもある。よって、き裂先端での原子配置や応力集中を精度良く再現し、それによって生じる原子間結合の切断や塑性変形を予測する必要がある。本発表ではBCC金属の粒内・粒界におけるき裂進展をモデル化するため、BCC鉄を例として分子動力学(MD)シミュレーションを行った。それらの結果において、転位の射出によってき裂進展が抑制される微視的現象が再現された。
鈴土 知明; 福元 謙一*
no journal, ,
体心立方(BCC)金属は、構造材料として原子炉の多くのコンポーネントに適用され、その熱的機械的健全性の研究は非常に重要である。低温においてBCC金属の変形の多くはらせん転位の移動によるものである。BCC金属のらせん転位の運動は複雑であることが知られている。本研究では、最新の分子動力学モデリング手法を用いて、実験で観測されている温度上昇によるすべり面の遷移を初めて再現することに成功した。次に、パイエルス障壁を超える転位のジャンプを高解像度で解析するアルゴリズムを考案し、この遷移現象の原因は熱揺らぎである可能性が高いことを示した。
鈴土 知明; 海老原 健一; 都留 智仁
no journal, ,
BCC金属と合金は構造材料として広く使用されているが、低温では脆化しやすい。しかしながら、その脆性破壊のメカニズムは完全には理解されていない。本研究では、BCC鉄のへき開破壊の3次元分子動力学シミュレーションを行った。本研究では特に、湾曲したクラックフロントを有するいわゆるペニー型のクラックから始まるモードI変形に焦点を当てた。シミュレーションの結果、{100}面のへき開では脆性破壊が観察されたが、他の面では転位の射出によりき裂が鈍化した。この結果は一般的な実験的観察、すなわちBCC遷移金属では{100}面において優先的にへき開が観察されるという結果に一致した。